No.070
台湾・金門島 探鳥の旅

 11月12日から4泊5日で台湾の台北市近辺と金門島の探鳥に出かけてきた。今回は鳥の専門家の呼びかけで集まった11人の私的なツアーである。早朝の便で成田を発ち、お昼過ぎには台北空港に着く。乗り換えが必要な西表や与那国より近い。温度は28度、さすが亜熱帯で東京とは20度の温度差がある。
 都心のホテルでチェックインを済ませ、早速、地下鉄で台北市北部の関渡(カンドゥ)自然公園に急ぐ。湿地と田んぼや池を含む広大な鳥獣保護区で、中央部にネイチャーセンター、観察路沿いに3箇所の観察小屋を配し、鳥類を中心とした自然環境の学習拠点となっている。折から年一度のバードフエスティバルが開催されていて大変な賑わいである。それでも関係者によると鳥インフルエンザ騒ぎで入場者は昨年の半分以下とか。ここでは年間を通じ230種ほどの野鳥が観察されているが、我々が2時間ほどで見たのは28種。時間不足は否めない。日本でも見られるサギやカモ、シギの仲間がほとんどであるが、台湾ならではのカノコバト、クビワムクドリ、カバイロハッカなどと日本では迷鳥に属すクロトキ、ベニバト、オウチュウが見られた。
 翌日は地下鉄とバスを乗り継ぎ山間部の探鳥地・烏来(ウーライ)へ。温泉と渓谷美を誇る観光地で、日曜でもあり大変な人出である。観察を始めるとたちまち人が集まり、望遠鏡が珍しいらしく覗かせると次々続きなかなか取り戻せない。川沿いの緩やかな坂道を辿ると所々で小鳥の群れに出会う。ベニサンショウクイ、タイワンオナガ、クロヒヨドリなど東南アジア南部の共通種で日本では見られない鳥である。ハイライトは台湾の固有種で珍鳥・ヤマムスメとの出会いである。赤い嘴と紫色の羽が特徴で10羽ほどが対岸の林縁を飛ぶ様はなんとも優雅である。


烏来


ヤマムスメ

 3日目からはいよいよ金門島である。6時45分発の国内線は7時40分には金門島に到着。大陸からの距離は2キロしかなく望遠鏡でアモイ(廈門)の町並みが望める。1949年の蒋介石率いる国民党の台湾入り以降、中国との戦闘で百万発の爆弾を見舞われた。ここ数年攻撃は途絶え、ようやく観光客が入れるようになり、最近は探鳥地としても注目を集めている。面積150平方キロメートルの小さな島に人口は5万人を超える。農業と漁業が中心だが、軍事施設も多く、町は結構賑わっている。バスが用意され、野鳥専門家で通訳を兼ねる台湾女性の案内で海辺の干潟や湖沼群、農耕地、牧場など探鳥地を巡る。二日間を通して、日本では渡り途上で時々見られるヤツガシラとアカガシラサギがここでは留鳥で普通に見られた。また、南西諸島でたまに見られるアオショウビンとタカサゴモズにも数回出会えた。日本では迷鳥のオニアジサシとナベコウがここでは冬鳥として到来していた。ナベコウはコウノトリの嘴を赤く、羽を黒くしたような鳥で、距離はあったがしっかり確認できた。最終5日目は早いフライトなので早朝1時間ほど宿の周辺で探鳥。収穫の終わったトウキビ畑が一面に広がり小鳥が比較的多いが、新たな種はなかった。池の周りでナベコウのねぐらを探したが、これも不発に終わった。


アオショウビン

タカサゴモズ

オニアジサシ

ナベコウ

 金門島で見たのは107種だった。過去に記録のある250種のうち半分近くが渡り鳥なので、春秋の渡りの時期に来ると200種近く見られるそうである。 台湾本島と合わせ今回見た鳥は126種。ヤマムスメ、アオショウビン、ナベコウなど憧れの鳥たちにも出会え、私の鳥の世界が広がった。小籠包や58度の高粱酒と共に忘れえぬ探鳥旅となろう。
(05.11.22)


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